いるのである。
鶴見が壺中《こちゅう》の天地《てんち》なぞというのはこんなものかと思っているうちに、夢が青い空気のなかから搾《しぼ》りだされる。虚無の油である。それがまた蟄伏《ちっぷく》していたくちなわのうごめきを思わせる。気に感ずるような衝動を鶴見も感ぜずにはいられなかった。かれもまたわが身のうちに夢に応ずる夢のけはいを感じたからである。
鶴見は現われてくる夢を見つめた。最初に目に映ってきたのは白馬である。よく神馬《じんめ》として神社に納めてある、あの馬である。木像のようでもあったが、人を乗せて、静かに足掻《あが》いている。馬のあとには若者がついてゆく。従者なのであろう。
一|反《たん》ばかりの畑地はよく均《な》らされてある。麦でも直ぐ播《ま》いてよさそうに準備されている。何の種を播くのかとなおよく見ていると、百姓の馬としては、あまりに神威を備えた白馬はふさわしくない。その上に馬が乗せている人物は僧形《そうぎょう》である。鶴見はここでちょっと意外な思いをする。
馬上の僧形の人物は極めて沈著な声で、うしろを振り向いて、「これ、喜海《きかい》、仕度は好いかな。さあ、一仕事はじめよ
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