れを夢が夢と呼《よ》び交《かわ》しているものと考えている。そういう考察が鶴見の思想に媚《こ》びているのである。永劫《えいごう》にわたって夢に夢を見る。そのことはこの世界の本性に適《かな》っている。徒《いたずら》にそんな夢想に溺れて出口を忘れているといわれてもやむをえない。出ることができれば出もしよう。しかも出ることは即ち入ることだ。無理に出るということは考えられない。
 鶴見がこんな妄想に浸っている最中に、景彦の声がまた聞えてきた。今度は馬鹿に丁寧な言葉で物をいっている。
「相変らずですな。そういう説法も見事かは知りませんが、まあわたくしの手なみを見ていてください。あなたに好い夢を見せてあげますよ。」
「気まぐれものの景彦がまた何をしでかすかな。まあ、じっとして見ていてやろう」と独語《ひとりごと》のようにいって、鶴見は黙ってしまう。
 景彦はそれきり音沙汰がない。しばらくして鶴見は退屈して、何気なく向うを見る。その時である。すべての光景が遽《にわか》に一変した。
 現実の刺戟はどこにも見られない。そこには深さもなければ広がりもない。ただうす蒼《あお》い雰囲気があたり一面を掩《おお》うて
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