でしょう。上々吉《じょうじょうきつ》の相です。」そういわれて、まんざらでもない表情が顔色にあらわれる。藤村は首尾よく及第したのである。
次に鶴見が宣告を受けた。「あなたは注意なさらなくてはいけない。」といって、観相家は改めて左の手を開かせて、天眼鏡《てんがんきょう》で物々しく見てから、その掌を指でたどって、「ここにこういう風にからまった線がありますな。あなたはどうご覧になりますか。ここをこうつなげば女という字が出る。あなたには女難《じょなん》の相がある。」これはまた手厳しい申渡しである。
それを聞いて、鶴見は何か痛切な心持にこそばゆいような感じを交えて、押黙っているより外はなかった。
活東は何といわれたか、すっかり忘れてしまって、一言もおぼえていない。
「手相も馬鹿にはできないね。」と、藤村はそこを出てからいった。
「当るような、当らぬようなことをいっておいて、実はこちらで判断するように仕向けるのですな。どうして、どうして手馴れたものだ。」誰にいいかけるでもなく、そういっている藤村の言葉を聞き放して、鶴見はひとりで嘯《うそぶ》いていた。
これで浅草へ遊行《ゆうこう》を試みた意義
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