を落してこういった。「君。わかるかね。あれがトランペット、それからフリウト。好いかね。こっちがクラリオネット。みんな吹奏楽器だね。」
興行場の看板の下の棚の上にはけばけばしい服装をした楽師《がくし》たちが押合って身づくろいをしている。われわれは藤村の指揮するままに場内に入って、しばらくのあいだ、玉乗の技をおとなしく見る。まるで従順な田舎出の若者である。鶴見はすまぬとはおもいながら心の中で反撥した。
「これからね。多分|大公孫樹《おおいちょう》の向うの、境内《けいだい》のはずれのところであったかと思うが、僕はいつぞや、観相の看板を出した家を見たことがあったよ。あそこへ行こう。ちょっと手相を見てもらうのさ。それはきっとおもしろいよ。どうだろう。」
藤村はこういっておいて、ずんずんその方へ足を向ける。二人はついて行った。どうやらこれなどもあらかじめ用意しておいた計画の一つであったのだろう。
観相家は果して相応におもしろいことをいった。藤村の手筋を仔細《しさい》らしく検《あらた》めてみて、「あなたは今事業を企てておいでになる。すえには必ず目的を遂げなさるね。それ、ここに通っている筋がある
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