とは違って徐々に進行するものではない。突如として湧いて出てくる。それが青年期の特調をかたちづくるのである。青年期への新入者は性慾を抑制する術《すべ》を知らない。手綱《たづな》をかけられぬ性慾は恣《ほしいまま》に荒れまわる。鶴見は最初から性慾道をそんな風に経験したのである。
 恋愛と性慾とをしばらく別な物としてみれば鶴見には性慾があって恋愛は殆どなかったといって好い。あとから顧みて少しはなつかしいと思い出されることのあるのは、初恋のほんの取りつきばなの短期間だけである。その期間のみが恋愛の手ほどきであったかと思えば、それはそれなりで、あわれを誘《さそ》う夢ともなる。当時流行の束髪《そくはつ》で、前髪を切って垂らした額つき、眉と眉とが神経質を思わせて迫っているように見え、その上に黒目がちで眉毛の濃い、切れ長の瞼《まぶた》が、おのずからにあらわす勝気を、うら若い微笑の花がその匂いのなかで和《やわ》らげている。夢の再現のうちに映ずるのは、そんな表情をもった円顔《まるがお》の少女である。
 少女は継母の親戚のもので、ちょくちょく遊びにきていた。鶴見が接する唯一の女性がそこにあった。夢ではないが夢
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