ム」を燃やす。好奇心も消えてたゞ早く外へ出たいと思ふばかりであつた。「ピラミツド」の上へは登ることを止めたが、一人の土人は私共に、金を呉れたら頂上まで十分間で往復して見せると言ふに至つては驚き且つ呆れた。私は其の男に『それは君の身體に惡いだらうから止める』と言つたら、『身體よりも金の方が大切だ』と言つた。萬事が此の主義と見える。

          四

 又、メムフイスの都の遺跡ほど淺ましいものはない。巨人の如き古王の石像が、死骸の樣に椰子の林の間に倒れてゐる外には、「バクシシユ」と呼んで蠅の如く蝟集する物貰ひの子供と、些少の古物を賣り付ける土人がゐる丈けである。たゞサツカラの階段「ピラミツド」の發掘は中々面白く、殊に第三王朝の王樣の墓穴に深く這入つた時は、苦しかつたが之を償ふ興味は充分にあつた。而してフワース氏の發掘小屋の氣持よいのを羨ましく思つた。「セウペウム」と言ふ神聖な牛を葬つたスバラしい墓があつたが、餘りに馬鹿々々しい設備であると感じた。二度目にサツカラへ行つた時は、大風が吹いて砂漠の砂を飛ばし、驢馬の上で面をあげることも出來ず、濛々として一町先きも見えない荒天であつた。
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