してゐるのである。カイロに於いて私はヒユー氏の家庭の午餐に招かれ、又クレスウエル氏の懇切なる案内によつて、氏の專攻題目たる囘教建築を見物することを得たが、此等は皆な英人から受けた厚意である。其の間に於いてたゞアラビヤ博物館のハツサン氏が、我々をオールド・カイロの遺跡に導かれたことゝ、コブト博物館を訪問して、ハンナ氏に會つて、濃い「モツカ」を飮みながら心ゆく談話に耽つたのは、埃及に於いて本國人と接觸し得た稀なる機會であつた。而して之に由つて感じたことは、若しも斯かる機會がなほ多く與へられたならば、私の埃及觀は餘程變つたに違ひないと思つたことである。
ギゼーの「ピラミツド」へは勿論カイロへ著いた翌朝直に出かけて行つた。而してナイルを始めて渡つたが、思つたよりも大きくなく、遙かに砂漠の黄褐色な臺地の端に立つてゐる「ピラミツド」の姿も、想像よりは小さく見えた。駱駝の乘心地はまことに船の樣な變なものであつたが、是れでなくては砂漠は渡れまい。
「ピラミツド」の内部へ這入つた時ほど無氣味のものはない。其の狹く險しい傾斜を暗中一本の蝋燭を便りに登つて行く間に、土人の案内者が屡々錢を貪つて「マグネシウ
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