《うし》はびぞん[#「びぞん」に傍点]といふ牛《うし》で、今日《こんにち》の牛《うし》とはその形《かたち》は異《こと》なつてゐますけれども、鹿《しか》や馬《うま》の形《かたち》はなんとよく似《に》て本物《ほんもの》のようでありませんか。筆致《ひつち》の確《たし》かな點《てん》、全體《ぜんたい》が生《い》き/\してゐるところ、實《じつ》にこれがそんな古《ふる》い一萬年前《いちまんねんぜん》にも近《ちか》い時代《じだい》に出來《でき》たものであらうかと、誰《たれ》も疑《うたが》ふのもむりはありません。實際《じつさい》のところこれが今《いま》から五十年《ごじゆうねん》ほど前《まへ》に、初《はじ》めてスペインの北《きた》の海岸《かいがん》アルタミラといふ田舍《ゐなか》の丘《をか》の上《うへ》の洞穴《ほらあな》で發見《はつけん》された時《とき》、たいていの學者《がくしや》は皆《みな》、これが一萬年《いちまんねん》もへた古《ふる》いものでなく、ずうっと新《あたら》しいものだといつて誰《たれ》も信《しん》じなかつたほどです。しかしその洞穴《ほらあな》をよく調《しら》べると、けっして新《あたら》しい時
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