いふ一人《ひとり》の熱心《ねつしん》な人《ひと》が、古《ふる》い風俗《ふうぞく》や品物《しなもの》がだん/\亡《ほろ》びて行《ゆ》くのを悲《かな》しんで、初《はじ》めはわづかの品物《しなもの》を集《あつ》め出《だ》し、それがだん/\大《おほ》きくなつて行《い》つて今日《こんにち》の國立《こくりつ》の大博物館《だいはくぶつかん》となり、北方博物館《ほつぽうはくぶつかん》といふ名稱《めいしよう》がつけられたのであります。建《た》て物《もの》は三階建《さんがいだ》ての立派《りつぱ》なもので、その一番下《いちばんした》の部屋《へや》にはスエーデンの各地方《かくちほう》の農家《のうか》の状態《じようたい》をそのまゝこゝへ移《うつ》してあつて、寢臺《しんだい》だとか爐邊《ろへん》の模樣《もよう》などが地方々々《ちほう/\》別《べつ》に區別《くべつ》して竝《なら》べてあるのです。また二階《にかい》には家々《いへ/\》の道具類《どうぐるい》が、あるひは織《お》り物《もの》あるひは木器《もくき》あるひは陶器《とうき》といふように種類《しゆるい》をわけて見《み》られるようにしてあります。それから三階《さんがい》へ上《のぼ》ると、今度《こんど》は時代順《じだいじゆん》に竝《なら》べて、だん/\變《かは》つて來《き》てゐるところを現《あらは》してゐます。かように三種《さんしゆ》の竝《なら》べ方《かた》によつて、私共《わたしども》見物人《けんぶつにん》はスエーデンの風俗《ふうぞく》や習慣《しゆうかん》の特質《とくしつ》を十分《じゆうぶん》にいろ/\の方面《ほうめん》から研究《けんきゆう》することが出來《でき》るようになつてをります。ところがまたこの博物館《はくぶつかん》のすぐ傍《そば》にスカンセンといふ丘陵《きゆうりよう》があつて、それが野外博物館《やがいはくぶつかん》になつてをります。その丘《をか》の上《うへ》にはスエーデンの各地方《かくちほう》の植物《しよくぶつ》を移植《いしよく》し、また特有《とくゆう》の動物《どうぶつ》をも飼養《しよう》してゐるところは、ちょっと植物園《しよくぶつえん》か動物園《どうぶつえん》のようでもあります。そしてその間《あひだ》に各地方《かくちほう》からそのまゝもつて來《き》た農民《のうみん》の小屋《こや》があり、古《ふる》い式《しき》の教會堂《きようかいどう》
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