見せてくれた溌溂たる奴を見ると、成程多少はそれに似た不氣味な形をしてゐるのみならず、頗る獰猛な鬪魚の種類であつて、近年は京都附近の川にも少し繁殖してゐると言ふ。その後釜山の小學校から貰つた郷土讀本を見たら、其の習性が面白く書かれてゐた。伯爵も特に此の魚を珍らしく思はれたと見え、『寶雲』誌上に連載せられてゐる朝鮮美術行脚の標題をば、「加牟流知《かむるち》」とせられてゐるのである。
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一昨年平壤へ行つた時、黒板先生に誘はれて成川の書院を見に行つた。晝食を成川河畔の料亭でたべると、珍らしい魚が刺身にも燒肴にも出てゐるので、其の名を聞くと「セガレ」(?)と言ふ。その後滿洲國輯安縣の高句麗の古墳を調査する爲め、鴨緑江畔の滿浦鎭へ暫く滯在すると、殆ど毎日の樣に此の魚を食はされた。一寸オコゼにも似た形をしてゐるが、カムルチ的のムツチリした仲々捨て難い味を持ち、川魚と言ふよりも寧ろ海魚の味である。洋々たるアリナレの流れはさすが鴨川とは違ふ。其處に住む魚もモロコやゴリの樣なものではない。併し昨年また同じ滿浦鎭へ行つて、同じ滿浦館へ行つたら、「セガレ」は一寸顏を見せただけで、後
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