いただいてかえり、それを煮《た》いて父にのませました。九時頃になって、すっかり発作は鎮まりました。もう今晩は大丈夫だろうと云って母は兄のところへ泊まりに行きました。兄もこの間うちから少し具合が悪く、附添さんにまかせているのは心配だったのです。
 その晩、私は夜中に何かしら目がさめました。こんな事はまれなことで何か胸さわぎがするので起き上って暫くじっとしておりました。隣の室で父はよい按配に眠っている様子。信二郎の部屋をうかがうと、電気がついていて寐がえりをうっているようです。日本間を洋風に使って、信二郎だけは寐台に寐ているのでしたが、その寐がえりの度に、スプリングの音がきこえて来ます。何か頭がさえて眠れないのですが、そのまま又ふとんの中に首をすくめてしまいました。

 翌朝。
 いつも早く目ざめる父が今日に限って、うんともすんとも云わないのを不審に思い、しずかに襖をあけました。と、私は其処に父の死体をみたのです。いえ、近寄ってみて始めてわかったのでした。青くなって、うつぶしている父の体にふれました。ぬくみがほとんどありません。父は死んだのです。私はおどろきました。信二郎を起しました。叔母
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