っておりました。父の友人の野中さんは大阪で大きな病院を経営しておられる方でした。私はすぐにその方を呼びに参りました。忙しくしておられて、直接お会い出来ませんでしたが、丸顔の人のよさそうな看護婦さんが、きっと今日夕方か晩伺うからとのことでした。すぐ引きかえして三時頃、おひる御飯をたべてますと、兄の病院の先生が来られました。余程、父は苦しいと見えて、母に又、神霊教の先生のところへ行って祈祷してもらってくれとも申します。病院の先生が注射をして帰られ、母が祈祷をたのみに出ました。父は注射の効果もなく喘いでおります。嗅薬をかがせました。煙が散らないように、私は両手でかこいをします。手と手の隙間より、父は、スースー云いながら煙を吸います。暫くしてひどい発作が終りました。晩になって野中先生が丸顔のさっきの看護婦を連れて来られました。又注射をします。静脈の何処をさそうとしても、注射だこでかたくなってしまっており、中々針がはいりません。静脈に針をちかづけると、にげてしまうのです。それでもやっと、二本いたしました。喘息を根治する薬はないらしく、頸動脈の手術も駄目だろうと野中先生は云われました。母が御神米を
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