っといいことよ」
 私はお腹の中で一つ一つを勘定しながらそう云いました。
「でもね。こんなものはすぐうれないのでね。……これが四千円、これがまあ八千円、セーブルはさっぱりなんでっせ。印象の色紙、三千円ね。後は全部で八千円。随分ふんぱつでっせ」
 私は、床に今掛けた、山水の絵をみます。箱の上においた茶碗をみます。父は黙っております。
「東さん、この壺はあんまりやすい。せめて、この小さいもの全部で一万二三千はほしいわよ」
 あれこれ、東さんと云い合っているうちに私も、もうどうだっていいという気持になりました。いくらに売れても同じです。一週間食べのびるか否かなのですから。結局、二万五千円で話がつきました。父も、それでいいと云うのです。東さんは話終ると一服煙管にきざみをいれて、ぷうっと美味しそうに吸いました。きざみ入れのさらさのえんじがいい色です。
「東さんのところへ行くと、ほしいものだらけ。父様、朝鮮箪笥もあったわよ」
「そうかい。焼いてしまったけど、あのうちにあったのもいい色だったね。さみしいことだよ」
「まあまあ旦那さん。元気出しなされ」
 東の主人はそう云って明日品物をとりに来ると出て
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