「銀を買ってほしいのですけど」
「買いますよ」
「今、幾らしますの」
「さあ物によって、品は何ですか」
「盃など」
「十八円から二十一、二円のところでしょうな。一匁が」
「そんなにやすいの」
「今さがってますからね、でも毎日ちがいますから、とにかく御損はさせませんよ。品物をみた上で、主人とも相談せにゃなりませんから」
「そうね、とにかく品物を明日持って来ますから、確かな物にちがいないけど」
「お嬢さん、他でもきいてみて下さい。他の云った値が家より高けりゃ、その価にしますし……。主人に内緒ですけど、造幣局へ持って行ってでしたら一番高く売れますよ、我々も結局造幣局へ持って行くんですから、その代り、一週間はかかるでしょうし、大阪へ行く電車賃やなんやかやいれたらわずかのちがいですけどね」
 親切にそう云ってくれます。私は堀川さんの店を出て、二三軒、通りがかりの貴金属屋に銀の値をきいてみました。十五円だと云ったり、二十四円だと云ったり、かなりまちまちでした。銀のことは明日、品物をみせてからにして、よくあたる八卦見だという、そのゴチャゴチャした支那うどんを食べさせたり安物のスタンドバーのあったりす
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