ました。店をみまわしますと、いろいろな形のものがごちゃごちゃにおいてあります。朝鮮の竹の棚がいいつやをみせて、その上の宋胡六の鉢をひきたたせております。
「ここへすわっていると、いつまでたってもあきないわね」
「へっへ、まあどうぞおかけ、お茶をいれますから」
主人は相槌をうちながらおいしい煎茶をいれてくれました。
「あのね、父が少し残っているものを買っていただきたいって申しますの、来ていただけません? 大したものでもないんですけれど」
「ああさようですか、お宅のものならなんでも買わせてもらいまっせ。今日の午後からでもうかがいましょう」
「有難う」
この主人は頭がひかっていて仲々の恰幅で、あごがふくらんでおり滑らかで福相をしています。私は主人の福相に、ふと八卦をみてもらわなきゃと思って立ち上りました。時計をみると十時半、これから、時計や貴金属をあつかっている心やすい堀川さんの店へ行って、よくあたるという三宮の八卦へ行って、家へかえったら丁度、東さんが来る頃だろう。と道をあるくのもせわしく、にぎやかな表通りの堀川さんのところへ行きました。主人が不在で技術師が時計をなおしておりました。
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