る裏通りの角っこに私はやって来ました。他に御客はなく、白髪のおじいさんは何か和とじの本をよんでおります。
「みてほしいんですけど、一体幾ら?」
「百円」
 ぶつっとそう云って、彼は私の顔をみました。その顔は小学校の時の先生によく似ておりました。
「年は、生まれた月日は?」
 私は自分の生年月日を告げます。竹の細い棒を何度もわけたり一しょにしたりして呪文を唱えているのをみながら、始めは冷やかし半分の気持でしたが、だんだん真剣になって来ました。何を予言されるのだろう。五分間位、呪文がつづき、その揚句、又木のドミノのようなもので、裏がえしたりおきかえたりしております。そのドミノの赤い線がみえたりかくれたりして、私の心を冷々させます。
「あんたは……」
「はい」
「結婚してますか」
 私は八卦見のくせにわからないのはいささか滑稽だと思い、笑いながら、首を横にふりました。
「そうでしょう。成程ね」
 しきりに感心したような顔をして、ドミノを眺めております。
「今月中にね、動という字が出てますからね。何かあんた自身、或いはお家に変動があります。それは、幸とも不幸とも云われません。とにかく、その後の
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