し、制御することも出来ないのです。寐る前に信二郎の部屋の前にもう一度何気なく来た私は、そこにすすり泣く声をききました。
またある日――
私と信二郎と叔母と春彦とカードをしておりました。父は相変らず、ぜいぜい云って隣の室で喘いでおります。
「ハート一つ」
くばられたカードのうち六枚もハートがあります。そうしてオーナが四つもあるのです。
「クラブ二つ」
「ハート二つ」
「クラブ三つ」
「ハート三つ」
サイドカードもこんなにいい。それにクラブがないから最初っからきれるわけです。私は得意になってあげました。ハートに決まります。叔母と組になっていて、開いた叔母の持礼も割合にいいのです。四つとって一勝負つけてしまいました。
「ビヤンジュエ、マドモアゼル」
叔母が私の手を握って喜びました。二十年もの昔、巴里で仏蘭西人とブリッジをしたことがあると叔母はよく云いました。そして彼等の勝負好きの話や怒りっぽいことなどもききました。私達は弟のために勝負事をやめようと決心した翌日から又、やりだしておりました。隣から父がそのさわぎに遂々怒り出しました。
「はやくねろ、十一時すぎだぞ」
私達はこそこそ
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