たとえば、私が、淫売行為をしたとする……」
 組の中では大きな笑い声が発散した。しかし、この言葉を知らない人の方が多かった。教師は、私にあきれて物が云えないというような表情で私の顔を凝視していた。
「あなたは答案紙に勿論、可、あるいは不可とつけるでしょう。私の心理も、私の行為の動機も知らないで。唯、不可とつけるあなたは、実に無責任なことです。あなたがそこで若し、倫理の教師として考えることをしたならば、不可をつける前に、自分の責任が大きすぎて後悔するでしょう。感情的なおどろきおののきの後で……」
 彼は、非常な怒りでチョークを投げつけ、このことは一時おあずけだというような曖昧な言葉をのこして出て行った。
 私のこの事件はすぐに学校中ひろまった。私に対する生徒の眼がすっかり変ってしまった。私は不良少女だということになった。教員室では私の導き方をどうすれはよいかと論議されていることをかの国語の女教師より耳にした。私は主任から又叱責をうけた。
 学期が終り、通知簿の公民のところに、良としてあったことは私は全くおかしくてたまらなかった。
 不良少女は二学期になってもその名は消えなかった。私のファ
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