ンはだんだん減って行った。あの事件の時、私の意見に賛成した少女だけは私にまだ、すみれの花のカードなどくれた。私はゴヤの絵のような彼女をかわいがった。私はだんだん学校に興味を持たなくなった。そしてつまらない学課の体操や裁縫や商業の時間は殆ど欠課した。体があまり丈夫でなく、戦時中の疲労がその頃になって出て来て、私は歩くことさえ苦痛であったから、医者の診断を出して時々の欠課を大目にみてもらっていた。私は休養室で寐ながら、青空をみていた。小さな翻訳小説をふとんの中に押し入れてよんだりした。だんだん大胆になって、早退し、帰りに古い洋ものの活動写真をみに行ったりした。不良少女はほんものになって来た。私は一日学校をさぼって京都の寺院を訪ねたりすることもした。家には内緒で欠席届をかいて出した。私は、空気が自分の体に痛みを与えるように感じだした。秋の空気は真空のようであった。私は自分が生きてゆくことが非常に不安になりだした。何故生きるんだろうかと考えた。そこには何も幸福らしい幸福は発見出来なかった。私は、勝手気儘に生きたいと思いながら、それが不可能であることを知っていた。規則。法律。そして、未だに封建的
前へ 次へ
全134ページ中91ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
久坂 葉子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング