間が戦争のために不自然な死に方をすることに対して別に何も感じてはいなかった。唯、一人自分の死に対してだけ思いつめた。
何時間そうやっていたのだろうか。私は考えながらうとうと眠りだした。私は手足を太い縄でしばられるゆめをみた。私は眠りながら数珠をひっぱった。手くびからはずれないで細いより糸はぷつんと切れた。こまかい玉がくさむらにころがった。私はそれがゆめなのか事実なのか判断つかぬままにうすらさむい夕刻まで気づかずにいた。
学校では大騒ぎになったらしい。人員点呼をせねばならない人が居なくなったのだからすぐに捜索がはじめられたのだろう。私の名を呼ぶ声がきこえた。私はそれでもじっとしていた。崖下に女の体操の教師の姿がみえた。彼女は私をみつけた。私の防壁頭巾は真黒で朱色のひもがついているので殊に目立つのだった。
「まあ、どうしたというんです、一体」
私は何も云わずに彼女の後に従った。
私はその女教師から主任の手へまわされた。主任は、出っ歯のスパルタ式教育と自称するいかめしい男の歴史の教師であった。彼は、私の責任や義務を追求した。私はだまったまま彼の肩越しに暗くなる窓外をみていた。彼はいら
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