級友達に先だって大声でそらんじることであった。私は、暗誦がちっとも出来なかった。その頃、未だ九九がすらすらと云えなく、減算なども十指を使っている位だったから、長い勅語など、到底覚え切れなかった。私は短い、孝経の抜萃や明治天皇の御製ばかりをとなえていた。ある日、先生から、青少年にたまわりたる勅語や教育勅語もするように命ぜられた。私は口だけ動かし、皆の大声で唱えるあとから、チョボチョボついていった。それが堪らなく私の気持をかなしませ、家へかえって一生懸命暗誦ばかりしたが仲々覚えられなかった。

 その頃の遊びで私を有頂天にさせたのは劇ごっこである。手まりやお手玉は、不器用な私は下手であり、いつも仲間はずれであった。劇ごっこは私の作った遊びで、ストーリーをこしらえておかないで、出鱈目に台詞のやりとりをしながら結末をつくるのであった。この遊びに賛成してくれたのは、アリーや他四五人の友達であり、ボール紙でかんむりを使ったり、お面をかいたりして、放課後になると壇上へたって、同じことを繰返しながら、それがだんだん変った話になってゆくのを喜んだ。
 そのうちに又、私のはしゃいだ気分を抑えつけてしまうこ
前へ 次へ
全134ページ中34ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
久坂 葉子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング