とが起きた。家の向いにある教会の御葬式と、巡礼と、アリーが大人になったことであった。
ある日、教会で女学院の先生の告別式があった。お天気が悪くぽつぽつ雨が降り出していたように思うが、とにかくアスファルト道の両側にずらりと列んだ紺色のセーラを着た大勢の女学生が、まるで歌をうたっているように大声でないているのである。ランドセルを背負った私は、門口にたってその光景を半分物珍しげに半分おどろきながらみていた。近親にも、知合いにもまだ死んだ人がその時の記憶になかったから、死がそんなにいたましいものだとは知らなかった。みているうちにわけがわからぬままに急にかなしくなって、もらい泣きをした。家の中へ飛び込むと、
「死んだらどうなるの、死んだらどうなるの」
と女中達にききまわった。彼女達は、手をまげてゆらしながら、お化けになるんだと教えた。後で、母にきいた時、
「いい子は神様のところ。悪い子は、針の山や火の海を越えてゆくの」
ときかされた。そして女中がお化けになると云ったんだと告げたら、母は女中達に叱っていた。私は針の山を歩く自分を想像した。火の海を泳ぐ自分を想像した。しかし、悪い子とはどんな子
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