私は家中の人気者になっていた。おどけてみせることを好んでいた。その頃には、大人から裏切られたかなしさや、かなしさから生まれた警戒心は殆どほぐされていた。そして、ママコであるなど考えもしなくなっていた。私は、普通の少女になり、平凡な生徒になっていた。
第三章
紀元二千六百年というはなはだにぎやかな年が来た。提灯行列や花電車やいろいろな催しがほとんど年中行われた。何故こんな御祭さわぎをするのか子供心に不思議であった。私にとって、二千五百九十九年も、六百年も大差なかった。年を一つとっただけであり、数字嫌いな私には、何年か、何日かということさえ、面倒なことであった。
四年生になると、男女別々の組になった。そのことが、何だか大人の一歩手前まで来たように思われて胸がときめいた。アリーと同じ組になれるように、私は毎日神様にお願いし、それがかなえられた。二学期に私は級長になった。そのことが又私を英雄気分にさせた。分列行進というのが毎週のように行われ、組の先頭にたって行進し、カシラーミギをかけた。唯一つ、この役目で辛いことがあった。それは、べんとうをたべる前に、教壇へたち、勅語や教訓を
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