してみせることがどんなに愉快なことであるかを知った。小さな頭一ぱいに、お星様やお花畠をおもい、美しい人達――それがどうしてもあのマネキンの裸像であったのだ――が踊ったり歌ったりしていた。
私は、大人達が親切にしてくれることを喜ばなかった。私の家は、大家族であり、父の兄弟は分家していなかったし、祖母が健在であったから、お正月だとか、祖父の命日だとかには必ず、大勢の人達が集った。そんな時、私も、きちんとした身なりをさせられ、御挨拶せねばならない。ところが私は、大人のおほめ言葉を真に受けなかったし、物をくれようとしても、それが何かの手であるように思えたから受けとらないで、大人も、私をひんまがった子だと自然目もくれないようになった。それに、弟が派手な存在であったのだ。弟は母の容貌に似ており、愛くるしく気品があった。大伯母や叔父達はみな弟をかわいがった。
「アンダウマレノミコト、って知ってる?」
これが、五歳にならない弟の作ったナゾナゾだった。
「誰方でしょう。どんな神様?」
大人達がきく。
「あんネ、ヤスダセイメイのことさ」
大人達は本心驚いた。人の話をきいたり、新聞のふりがなをそろ
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