そろよみはじめていたらしい。私には、そのからくりが、何のことだかさっぱりわからないでいた。
私は弟がもてるのをこころよく思わなかった。しかし口喧嘩をしても負ける。腕でいってもまかされる。私は余計に、ふさぎこんでしまっていたのである。
お正月。祖母一人住んでいる大きな御家に、私は従兄妹達と会ったりすることもいやであった。私は、広い庭の隅で、マネキンの絵ばかりかいて独りぽつねんとしていた。私は、自分がかなしくてたまらなかった。そして、何という不幸なかわいそうなものだろうと思っていた。いや、無理に悲劇を捏造しようとしていたのかも知れない。私は、屹度、ままっ子なんだ。私は次第にそういうひねくれた気持がかさんで行った。姉の少女小説を女中によんできかせてもらいながら、主人公が自分のような気さえして、涙一ぱいためてしまったこともあった。私は、自分を悲劇の中に生かし、自分のためにかなしんだのだけれど、決して自分以外のものには同情しないでいた。
トリチャン、ワンチャン、ウサギチャン
そんな動物が、子供のために飼育されていたけれど、私は、籠の四十雀にもカナリヤにも見むきもしなかった。
その頃、
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