》が働《はたら》かなかった。
かの女はそのとき園《その》を指さした。そこにアーサが病人用のねいすにねているのを見た。そのそばに母の夫人《ふじん》がいた。そしてもう一つこちらには……ジェイムズ・ミリガン氏《し》がいた。
こわくなって、実際《じっさい》戦慄《せんりつ》して、わたしはかきねの後ろにはいこんだ。リーズはわたしがなぜそんなことをするか、ふしぎに思ったにちがいない。そのときわたしは手まねをして、かの女に向こうへ行かせた。
「おいで、リーズ。それでないとぼくが、災難《さいなん》に会うから」とわたしは言った。「あした九時にここへおいで。一人でだよ。そのとき話してあげるから」
かの女はしばらくちゅうちょしたが、やがて園へはいって行った。
「ぼくたちはミリガン夫人《ふじん》に話をするのをあしたまで待っていてはいけない」とマチアが言った。「こう言ううちもあの悪おじさんがアーサを殺《ころ》しかねない。あの人はまだぼくの顔は知らないのだから、ぼくはすぐにミリガン夫人《ふじん》に会いに行って話をする」
マチアの言うところに道理があったので、わたしはかれを出してやった。わたしはしばらくのあいだ、少しはなれた大きなくりの木のかげに待っていることにした。
わたしは長いあいだマチアを待った。十何度も、わたしはかれを出してやったのが、失敗《しっぱい》ではなかったかと疑《うたが》った。
やっとのことで、わたしはかれがミリガン夫人《ふじん》を連《つ》れてもどって来るのを見た。わたしはあわてて夫人のほうへかけて行って、わたしに差《さ》し出された手をつかんで、その上にからだをかがめた。しかしかの女は両うでをわたしのからだに回して、こごみながら優《やさ》しくわたしの額《ひたい》にキッスした。
「まあ、どうおしだえ」と夫人《ふじん》はつぶやいた。
夫人は美しい白い指で、わたしの額髪《ひたいがみ》をなでて、長いあいだわたしの顔を見た。
「そうだそうだ」とかの女は優《やさ》しく独《ひと》り言《ごと》をささやいた。
わたしはあまり幸福で、ひと言もものが言えなかった。
「マチアとわたしは長いあいだお話をしましたよ」とかの女は言った。「でもわたしはあなたがどうしてドリスコルのうちへ行くようになったか、あなたの口から聞きたいと思うのですよ」
わたしはかの女に問われるままに答えた。そしてかの女は
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