ょうな声で歌う声がした。だれだろう。なんというふしぎな声だろう。
「アーサじゃないかしら」とマチアが聞いた。
「いいや、アーサではない。ぼくはこれまであんな声を聞いたことがなかった」
 けれどそのうちカピがくんくん言い始めた。はげしい歓喜《かんき》の表情《ひょうじょう》のありったけを見せて、かべに向かってとびかかっていた。
「だれが歌を歌っているのだ」と、わたしはもう自分をおさえることができなくなってさけんだ。
「ルミ」と、そのときそのきみょうなか細い声がさけんだ。いまのわたしのことばに返事をする代わりに、わたしの名前を呼《よ》んだのだ。
 マチアとわたしはかみなりに打たれたようにおたがいに顔を見合わせた。わたしたちがあっけにとられて、てんでんの顔を見合ったまま立っていると、かべの向こうにハンケチが一|枚《まい》ひらひらしているのが見えた。わたしたちはそこへかけ出して行った。わたしたちは、園《その》の向《む》こう側《がわ》を取り巻《ま》いているかきねのそばまで行ってみて、初《はじ》めてハンケチをふっている人を見つけた。
「リーズだ」
 とうとうわたしたちはかの女を見つけた。もう遠くない所にミリガン夫人《ふじん》も、アーサもいるにちがいなかった。
「でもだれが歌を歌ったのだろう」
 これがマチアもわたしも、やっとことばが出るといきなり持ち出した質問《しつもん》であった。
「わたしよ」とリーズが答えた。
 リーズが歌っていた。リーズが話しかけていた。
 医者は、いつかリーズがかの女のことばを取り返すだろう、それはたぶんはげしい感動の場合だと言っていたが、わたしはそんなことができるはずがないと思っていた。でも目の前に奇跡《きせき》は行われた。そしてそれはわたしがかの女の所に来て、いつも歌い慣《な》れたナポリ小唄《こうた》を歌うのを聞いて、はげしい感動を起こしたしゅんかんに、かの女がその声を回復《かいふく》したことがわかった。わたしはそう思って、深く心を打たれたあまり、両手を延《の》ばしてからだをまっすぐにした。
「ミリガン夫人《ふじん》はどこにいるの」とわたしはたずねた。「それからアーサは」
 リーズはくちびるを動かしたが、ほんの聞き取れない音を出しただけで、じれったくなって、いつもの手まねのことばになった。かの女はまだことばをほんとうに出すだけに器用《きよう》に舌《した
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