、そのあいだときどき口をはさんで、所どころ要点《ようてん》を確《たし》かめるだけであった。わたしはこれほどの熱心《ねっしん》をもって話を聞いてもらったことがなかった。かの女の目はすこしもわたしからはなれなかった。
 わたしが話をしてしまったとき、かの女はしばらくだまって、わたしの顔を見つめていた。最後《さいご》にかの女は言った。
「これはなかなか重大なことだから、よく考えなければならない。けれどいまからあなたはアーサのお友だち……」
 こう言ってかの女はすこしちゅうちょしながら、「兄弟だと思ってください。二時間たったら、ザルプというホテルへ来てください。さしあたりそこに待っていてくれれば、だれか人を寄《よ》こしてそちらへ案内《あんない》させますから。ではしばらくごめんなさいよ」
 ふたたび夫人《ふじん》はわたしにキッスした。そしてマチアと握手《あくしゅ》をして、足早に歩いて行った。
「きみはミリガン夫人《ふじん》になにを話したのだ」とわたしはマチアに質問《しつもん》した。
「あの人がいまきみに言っただけのことさ。それからまだいろいろなことをね」とかれは答えた。
「ああ、あの人は親切なおくさんだね。りっぱなおくさんだね」
「アーサにも会ったかい」
「ほんの遠方から。でもりっぱな子どもだということはよくわかった」
 わたしはまだマチアに質問《しつもん》し続《つづ》けた。けれどもかれは、何事もぼんやりとしか答えなかった。
 わたしたちは相変《あいか》わらずぼろぼろの旅仕度であったが、ホテルでは黒の礼服に白のネクタイをした給仕《きゅうじ》に案内《あんない》をされた。かれはわたしたちを居間《いま》へ連《つ》れて行った。わたしたちの寝部屋《ねべや》をわたしはどんなに美しいと思ったろう。そこには白い寝台《ねだい》がならんでいた。窓《まど》は湖水を見晴らす露台《ろだい》に向かって開いていた。給仕は「夕食にはなんでもお好《この》みのものを」と言った。そうして、よければ露台へ食卓《しょくたく》を出そうかとも言った。
「タルトがありますか」とマチアがたずねた。
「へえ、大黄《だいおう》のタルトでも、いちごのタルトでも、すぐりの実のタルトでも」
「よし。ではそのタルトをぜひ出してください」
「三|種《しゅ》ともみんな出しますか」
「むろん」
「それからお食事は。肉はなんにいたしましょう。野
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