いて、ノルマンデーからバターと卵《たまご》を運んで、フランスの海岸を回っているのだ。ぼくらはなにからなにまでボブの世話になった。ぼくのようなちっぽけな者が、一人でなにができよう。汽車からとび下りるくふうもボブが考えたのだ」
「それからカピは。カピをうまく取り返したのはだれだ」
「ぼくだよ。だが、ぼくらが犬を交番から取りもどしたあとで、見つからないように黄色く絵の具をぬったのはボブだった。判事《はんじ》はあの巡査《じゅんさ》を気が利《き》いていると言った。だがカピを連《つ》れて行かれるのは、あんまり気が利いたと言えない。もっともカピはぼくのにおいをかぎつけて、ほとんど一人で出て来た。ボブは犬どろぼうの術《じゅつ》を知っているのだ」
「それからきみの足は」
「よくなったよ。たいていよくなったよ。じつはぼくは足のことを考えているひまがなかった」
夜になりかかっていた。わたしたちはまだ長い道を行かなければならなかった。
「きみはこわいか」とわたしがだまって転《ころ》がっていると、マチアがたずねた。
「いや、こわくはない」とわたしは答えた。「だってぼくはつかまるとは思わないから。でもにげ出すということが罪《つみ》になりやしないかと思うのだ。それが気になるのだ」
「ボブもぼくも、きみを巡回裁判《じゅんかいさいばん》に出すぐらいなら、なにをしてもいいと思ったからな」
あれから、汽車が止まったところで、巡査《じゅんさ》がさっそく捜索《そうさく》にかかることは確《たし》かなので、わたしたちはいっしょうけんめい馬を走らせた。わたしたちの通って行く村は、ひじょうに静《しず》かであった。明かりがただ二つ三つ窓《まど》に見えた。マチアとわたしは毛布《もうふ》の下にもぐった。しばらくのあいだ寒い風がふいていた。くちびるに舌《した》を当てると、塩《しお》からい味がした。ああ、わたしたちは海に近づいていた。
まもなくわたしたちは、ときどき明かりのちらちらするのを見つけた。それが燈台《とうだい》であった。ふとボブは馬を止めて、馬車からとび下りながら、わたしたちに待っていろと言った。かれは兄弟の所へ行って、わたしたちをその船に乗せて、安全に向こう岸までわたれるか、様子を聞きに行ったのであった。
ボブはひじょうに遠くへ行ったらしかった。わたしは口をきかなかった。すぐ間近の岸に、波のくだける音が聞
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