こえた。マチアはふるえていた。わたしもふるえていた。
「寒いね」とかれはささやいた。わたしたちをふるえさせるのは寒さのためだけであったろうか。
 やがて往来《おうらい》に足音がした。ボブは帰って来た。わたしの運命が決められた。胴服《どうふく》を着て油じみたぼうしをかぶったぶこつな顔つきの船乗りが、ボブといっしょに来た。
「これがぼくの兄貴《あにき》だ」とボブが言った。「きみたちを船に乗せて行ってくれるはずだ。そこでぼくはここでお別《わか》れとしよう。だれもぼくがきみをここへ連《つ》れて来たことを知るはずがないよ」
 わたしはボブに礼を言おうとしたが、かれは手短に打ち切った。わたしはかれの手をにぎった。
「それは言いっこなしだ」とかれは軽く言った。「きみたち二人は、このあいだの晩《ばん》ぼくを助けてくれた。いいことをすればいい報《むく》いがあるさ。それでぼくもマチアの友だちを助けてあげることができたのだから、自分でもゆかいだ」
 わたしたちはボブの兄弟のあとについて、いくつか折《お》れ曲がった静《しず》かな通りを通って、波止場《はとば》に着いた。かれはひと言も口をきくことなしに、一そうの小さい帆船《はんせん》を指さした。二、三分でわたしたちは甲板《かんぱん》の上にいた。かれはわたしたちに下の小さな船室にはいれと言った。
「二時間すれば船を出す」とかれは言った。「そこにはいって、音のしないようにしておいで」
 でもわたしたちはもうふるえてはいなかった。わたしたちはまっ暗な中で肩《かた》をならべてすわっていた。


     白鳥号

 ボブの兄弟が立ち去ったあと、しばらくのあいだわたしたちは、ただ風の音と、キールにぶつかる波の音を聞くだけであった。やがて足音が上の甲板《かんぱん》に聞こえて、滑車《かっしゃ》が回りだした。帆《ほ》が上げられて、やがて急に一方にかしいだ。動き始めたと思うまもなく、船はあらい海の上へぐんぐんすべり出した。
「マチア、気のどくだね」とわたしはかれの手を取った。
「かまわないよ。助かったのだから」とかれは言った。「船に酔《よ》ったってなんだ」
 そのあくる日、わたしは船室と甲板《かんぱん》の間に時間を過《す》ごした。マチアは一人うっちゃっておいてもらいたがった。とうとう船長が、あれがバルフルールだと指さしてくれたとき、わたしは急いで船室に下りて、
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