にできるだけのことをしてくれたが、その弁護は力が弱かった。
 そのとき判事《はんじ》はしばらくわたしを郡立刑務所《ぐんりつけいむしょ》へ送っておいて、いずれ巡回裁判《じゅんかいさいばん》の回って来るまで待つことにしようと言いわたした。
 巡回裁判。わたしはこしかけにたおれた。おお、なぜわたしはマチアの言うことを聞かなかったのであろう。


     ボブ

 判事《はんじ》が子どもを連《つ》れて寺へはいったどろぼうの捕縛《ほばく》を待つために、わたしはとうとう放免《ほうめん》されなかった。かれらはそのときになって、わたしがその男の共犯者《きょうはんしゃ》であるかどうか初《はじ》めて決めようと言うのである。
 かれらはただいま追跡《ついせき》中であると検事《けんじ》が言った。そうすると、わたしはその男とならんで、囚人席《しゅうじんせき》に入れられて、巡回裁判官《じゅんかいさいばんかん》の前に出る恥辱《ちじょく》と苦痛《くつう》をしのばなければならないのであろう。
 その晩《ばん》日のくれかかるまえ、わたしははっきりとコルネの音を聞いた。マチアが来ているのだ。なつかしいマチアよ。かれはじきそばに来て、わたしのことを思っていることを知らそうとしたのであった。かれはまさしく窓《まど》の外の往来《おうらい》にいるのであった。わたしは足音とおおぜいのぶつぶつ言う声を聞いた。マチアとボブが、きっと演芸《えんげい》を始めているのであった。
 ふとわたしはよくとおる声で、「あした夜明けに」とフランス語で言う声を聞いた。わたしはそれがなんのことだか確《たし》かにはわからなかった。とにかくあしたの夜明けにはしっかり気を張《は》っていなければならなかった。
 暗くなるとさっそくわたしはハンモックにはいった。たいへんつかれてはいたけれど、ねこむにはなかなか手間がとれた。そのうちやっとぐっすりねこんだ。目が覚《さ》めるともう夜中であった。星は暗い空にかがやいて、沈黙《ちんもく》がすべてを支配《しはい》していた。時計は三時を打った。わたしはこれで一時間、これで十五分と勘定《かんじょう》していた。かべによりかかりながら、じっと目を窓《まど》に向けて、星が一つ一つ消えてゆくのをながめた。遠方には鶏《とり》がときを作る声が聞こえた。もう明け方であった。
 わたしはごく静《しず》かに窓《まど》を開けた。
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