なにがそこにあったか。相変《あいか》わらず鉄の格子《こうし》と、高いかべが前にあった。わたしは出ることができない。けれどばかげた考えではあっても、わたしは自由になることを待ちもうけていた。
朝の風が耳がちぎれるように寒かったけれど、わたしは窓《まど》のそばに立ち止まって、なにを見るということなしに見て、なにを聞くということなしに耳を立てた。
大きな白い雲が空にうかんだ。夜明けであった。わたしの心臓《しんぞう》ははげしく鼓動《こどう》した。
するとかべをがりがり引っかく音が聞こえた。でも足音をすこしも聞かなかった。わたしは耳をすませた。引っかく音が続《つづ》いた。ぬっと人の頭がかべの上に現《あらわ》れた。うす暗い光の中にわたしはボブを見つけた。
かれは鉄格子《てつごうし》に顔をおしつけて、わたしを見た。
「静《しず》かに」とかれはそっと言った。
かれはわたしに窓《まど》からどけという合図をした。ふしぎに思いながら、わたしは服従《ふくじゅう》した。かれは豆鉄砲《まめでっぽう》を口に当ててふいた。かわいらしい鉄砲玉《てっぽうたま》が空をまって、わたしの足もとに落ちた。ボブの頭が消えた。
わたしは弾丸《だんがん》をわしづかみにつかんだ。それはうすい紙をまめのように小さい玉に丸めたものであった。明かりがあんまり暗いので、なにが書いてあるか見えなかった。夜の明けるまで待たなければならなかった。わたしはそっと窓《まど》を閉《し》めて、小さな紙玉を手に持ったまま、またハンモックに転《ころ》がった。光の来ることのどんなにおそいことぞ。やっとわたしはその紙に書いてある文字を読むことができた。それにはこうあった。
「あしたきみは汽車に乗せられて、郡立刑務所《ぐんりつけいむしょ》へ送られるはずだ。巡査《じゅんさ》が一人ついて行くことになっている。きみは汽車の戸口に近い所にいたまえ。よく勘定《かんじょう》していたまえ、四十五分目に汽車は連結点《れんけつてん》の近くで速力《そくりょく》をゆるめる。そのときドアを開けてとびだしたまえ。左手の小山を登れば、われわれはそこに待っている。しつかりやれ。なによりもうまく前へとんで、足を下に着くことだ」
助かった。わたしは巡回裁判《じゅんかいさいばん》の前に出ないですむ。ありがたい、マチア。それから、ボブ。マチアに加勢《かせい》してくれるボブ
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