》の上に順々に腰を下ろした。
一番うしろの藁椅子を占めた私は、しばらく黙祷《もくとう》の真似のような事をしていたが、やがて目を上げて、さっきの二人の少女の姿を会衆のうちに捜し出した。すぐ彼女たちの可愛らしいお下げ髪が目に止った。彼女たちは一番前列に、面※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]《おもわ》をかぶった母親らしい中年の婦人の傍に、跪《ひざまず》きながら無邪気に掌を合わせてお祈りをしていた。
私はそういうお下げ髪の少女たちの後姿にいつまでも目をそそいでいたが、そのうち何気なく、立原の形見の一つである、パスカル少年のうたったドビュッシイの歌なぞを胸に浮ばせていた。それはドビュッシイが晩年病床にあって、無謀なドイツ軍のベルギイ侵入の事を聞き、家も学校も教会もみんな焼かれてしまった可哀そうな子供たちのために、彼等の迎えるであろうわびしいクリスマスを思って、作曲したものだった。
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〔Noe:l ! petit Noe:l ! n'allez pas chez eux,〕
N'allez plus jamais chez eux, punissez−les !
[#
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