、再び見いだした。しかし私自身はと云えば、去年とはいくらか変って、ことにお前の家族たちの私に対する態度には、かなり神経質になっていた。
それにしてもこの一年足らずのうちに、お前はまあなんとすっかり変ってしまったのだ! 顔だちも、見ちがえるほどメランコリックになってしまっている。そしてもう去年のように親しげに私に口をきいてはくれないのだ。昔のお前をあんなにもあどけなく見せていた、赤いさくらんぼのついた麦藁帽子もかぶらずに、若い女のように、髪を葡萄《ぶどう》の房《ふさ》のような恰好《かっこう》に編んでいた。鼠色《ねずみいろ》の海水着をきて海岸に出てくることはあっても、去年のように私たちに仲間はずれにされながらも、私たちにうるさくつきまとうようなこともなく、小さな弟のほんの遊び相手をしている位のものだった。私はなんだかお前に裏切られたような気がしてならなかった。
日曜日ごとに、お前はお前の姉と連れ立って、村の小さな教会へ行くようになった。そう云えば、お前はどうもお前の姉に急に似て来だしたように見える。お前の姉は私と同い年だった。いつも髪の毛を洗ったあとのような、いやな臭《にお》いをさせて
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