ば、わが魂はわが身より君が方にとあくがれ出づ。しかるときは、われはわが胸に君を掻きいだきゐるがごとき心ちす、ひねもす心も切に恋ひわたりゐし君を。ああ、甘き睡りよ、われを欺《たばか》りてなりとも慰めよ。うつつにては君に逢ひがたきわれに、せめて恋ひしき幻をだにひと夜与へよ。」という哀婉《あいえん》な一章などを拾い読みしたりしつつ、午《ひる》過ぎ、やっと近江《おうみ》の湖《うみ》にきた。
ここで、こんどの物語の結末――あの不しあわせな女がこの湖のほとりでむかしの男と再会する最後の場面――を考えてから、あすは東京に帰るつもりだ。
いま、ちょっと近所の小さな村を二つ三つ歩いてきてみた。どこの人家の垣根にも、茶の花がしろじろと咲いていた。これで、昼の月でもほのかに空に浮かんでいたら満点だが。――
古墳
J兄
この秋はずっと奈良に滞在していましたが、どうも思うように仕事がはかどらず、とうとうその仕事をかたづけるためにしばらく東京に舞いもどっていました。それからすぐまたこちらに来るつもりでいましたが、すこし無理をして仕事をしたため、そのあとがひどく疲れて一週間ばかり寐《ね》たり何かし
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