が、日本に仏教が渡来してきて、その新らしい宗教に次第に追いやられながら、遠い田舎のほうへと流浪の旅をつづけ出す、古代の小さな神々の佗《わ》びしいうしろ姿を一つの物語にして描いてみたい。それらの流謫《るたく》の神々にいたく同情し、彼等をなつかしみながらも、新らしい信仰に目ざめてゆく若い貴族をひとり見つけてきて、それをその小説の主人公にするのだ。なかなか好いものになりそうではないか。
行く手の森の上に次ぎ次ぎに立ちあらわれてくる法輪寺や法起寺の小さな古塔を目にしながら、そんな小説を考え考え、そこいらの田圃《たんぼ》の中を歩いていると、僕はなんともいえず心なごやかな、いわばパストラアルな気分にさえなり出していた。
[#地から1字上げ]十月二十七日、琵琶湖にて
けさ奈良を立って、ちょっと京都にたちより、往きあたりばったりにはいった或る古本屋で、リルケが「ぽるとがる文《ぶみ》」などと共に愛していた十六世紀のリヨンびとルイズ・ラベという薄倖の女詩人のかわいらしい詩集を見つけて、飛びあがるようになって喜んで、途中、そのなかで、
「ゆふべわが臥床《ふしど》に入りて、いましも甘き睡りに入らんとすれ
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