u先づ、植物の生長のリズムが「噴出する」(effuser[#「effuser」は斜体])といふ言葉によつて我々に與へられる。それはまことに「葵色の高い枝付燭臺のやうに」輝かしく見える。それから、小さな星状の花が、水面に生れる「氣泡」(bulle[#「bulle」は斜体])に比較されつつ示される。」(私の飜譯では、それ等の此喩の順序が逆になつてゐますが、これは已むを得ません。)それから、すべての比喩が岸邊に戲れる波に持つて行かれてゐます。(「逆卷く」(〔de'ferler〕[#「〔de'ferler〕」は斜体])「泡」(mousse[#「mousse」は斜体])「泡」(〔e'cume〕[#「〔e'cume〕」は斜体])――プルウストは、彼自身でも、「フロオベルのスタイルについて」といふエッセイの中で、「自分は比喩のみがスタイルに或種の永遠性を與へ得ると思ふ。」と述べてゐますが、これらの海の要素から借りて來た一聯の比喩が、いかにリラの實體そのものを我々の目に見えるやうにさせるのに效果的であるか、これは全然リラの花なんといふものを知らない我々をも、それを知つてゐるかのやうに樂しませてくれるのでも
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