。たまたま私達の許《もと》に訪れて来るような人でもあると、その青稲をそのまま馬に飼ってやっているのも、いかにもあわれが深かった。小鷹狩が好きなので、ときおり野へ出ては鷹を舞い上がらせたりしているものの、こんなところでもって一緒に暮らすようになった道綱は、まだ若いだけ、何んだかすべてが物足らなさそうに見えた。
そのままやがて冬になろうという頃、こちらではもうすっかり仲の絶えた気でいた殿の許から、突然、冬の着物を使いの者に持って来させて、これを仕立ててくれなどと言って来られた。「御文もありましたが、途中に落して来てしまいました」と使いの者がしきりに言《い》い訣《わけ》をしていたが、最初からそんなものはお持たせにならなかったのだろうと思われた。私はもう意地を立てとおす気もなく、言われるなりにそれを仕立てて、こちらからも文を附けずに送って差し上げた。その後、そんな事が二度も三度も続いてあった。なかなか仲が絶えそうで絶えないのが気になったが、それもまあこんな縫物位のためではと、私達の果敢《はか》なかった仲がいまさらのように思い返されたりしているうちに、その年も暮れたのだった。
ながいこと大夫
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