ほととぎす
堀辰雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)とけて寐《ね》らめや
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)源の宰相|某《なにがし》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)撫子[#「撫子」に傍点]
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われぞげにとけて寐《ね》らめやほととぎす
ものおもひまさりこゑとなるらん
蜻蛉日記
その一
「昔、殿のお通いになっていらしった源の宰相|某《なにがし》とか申された殿の御|女《むすめ》の腹に、お美しい女君が一人いらっしゃるそうでございます。その女君なんぞをお引き取りになられては、如何なものでございましょう? なんでも今は、お二人共、兄《しょうと》に当られる禅師《ぜじ》の君の御世話になられ、志賀の麓《ふもと》に大層心細いお暮らしをなすって入らっしゃるそうでございますが……」
やっと春の立ち返った或日、そんな事を不意に思い出したように年とった女房の一人が、私の前で話し出した。そう、そう言えば、そんな御方の事も聞いていたっけ……と私は以前殿にそういう女の御方もあられた事など、
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