と同じである。
一〇 その一が他を離れて存在し得るとき、二つの実体は実在的に区別されると言われる。
要請
第一に[#「第一に」に傍点]、私は、読者が自分の感覚をこれまで信用した根拠がいかに薄弱なものであるか、またその上に築いたすべての判断がいかに不確実なものであるかに注意せられるように、そしてこのことを長い間またしばしば自分の心に思いめぐらし、かくて遂に自分の感覚にもはやあまり多く信頼しない習慣を得られるやうに、要請する。というのはこれは形而上学に関する事がらの確実性を知覚するために必要であると私は判断するから。
第二に[#「第二に」に傍点]、私は、読者が自分自身の精神並びにその全体の属性を考察せられるように、要請する、これらについては、たとい自分の感覚によってかつて受取ったすべてのものが偽であると仮定しても、疑うことができないことを認められるであろう。そして私は、読者が精神を明晰に知覚し、そしてそれがすべての物体的なものよりも認識するにいっそう容易であると信じる習慣を得るまでは、精神を考察することを止められないように、要請する。
第三に[#「第三に」に傍点]、それ自身によって知られ、読者が自分において発見するところの命題、例えば、同じものは同時に有ると共にあらぬことはできぬ[#「同じものは同時に有ると共にあらぬことはできぬ」に傍点]、また、無はいかなるものの動力因であることも不可能である[#「無はいかなるものの動力因であることも不可能である」に傍点]、及びこれに類する命題を、注意深く考量し、そしてかようにして自然によって自分に賦与されている、しかし感覚の表象が極めてはなはだしく混乱させ不分明にするのをつねとするところの悟性の明瞭さを、純粋に、感覚から解放して、使用するように、私は要請する。なぜならかような仕方で読者にとって後述の諸公理の真理は容易に明かになるであろうから。
第四に[#「第四に」に傍点]、私は、読者がそのうちには多くの同時に有する属性の複合が含まれるところの本性の観念を検討するように、要請する、すなわち、三角形の本性、正方形のあるいは何か他の図形の本性、さらにまた精神の本性、物体の本性、そして何よりも神あるいはこの上なく完全な実有の本性はかかる性質のものである。そして読者が、かかる本性のうちに含まれることを我々が知覚するところのすべてのものは、実際にそれらのものについて肯定せられ得ることに注意するように、私は要請する。例えば、三角形の本性のうちにはその三つの角は二直形に等しいということが含まれ、また物体すなわち延長を有するもののうちには可分性が(というのはそれを少くとも思惟によって分割し得ないほど小さな延長を有するものを我々は何ら考え得ないから)含まれるゆえに、すべての三角形の三つの角は二直角に等しい、またすべての物体は可分であると言うのは真である。
第五に[#「第五に」に傍点]、私は、読者がこの上なく完全な実有の本性の観想に長くまた多くとどまるように、要請する、そして中にも、あらゆる他の本性の観念のうちにはたしかに可能的存在が含まれるが、神の観念のうちにはしかし単に可能的存在のみではなく、また実に必然的存在が含まれることを考察するように、要請する。なぜなら、ただこのことから、そして何等まわりくどい議論なしに、神が存在することを読者は認識するであろう、そしてそれは読者にとって、二が偶数であり、あるいは三が奇数であること、及びこれに類することに劣らず、それ自身によって明かであるであろう。というのは、或る人々にはそれ自身によって明かであることがらであるのに、他の人々には長々しい議論によってでないと理解せられないものがあるからである。
第六に[#「第六に」に傍点]、私は、読者が私の省察のなかで挙げたところの、明晰で判明な知覚のすべての例、さらにまた不明瞭で不分明な知覚のすべての例を熟考することによって、明晰に認識せられるものを不明瞭なものから直別することに慣れるように、要請する。なぜなら、これは規則によってよりも例によっていっそう容易に学ばれるから、そして私はかしこでこのことがらのすべての例を説明したか、あるいは少くとも或る程度触れておいたと思う。
第七に[#「第七に」に傍点]、そして最期に、私は、読者が明晰に知覚したもののうちには決して何等の虚偽も発見せず、反対にただ不明瞭に把捉したもののうちには偶然によるほか何らの真理も見出さなかったことに注意することによつて、単に感覚の先入見に基づいて、あるいは何か知られていないものを含む仮説に基づいて、純粋な悟性によって明晰にかつ判明に知覚せられるところのものに疑いをいれることは、まったく不合理であるということを考察するように、要請する。なぜ
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