、それを検査するためにすべての感覚、記憶及び悟性を召喚した後に、そのうちのいずれによってもその他のものと矛盾するいかなることも私に知らされないならば、わずかなりとも疑うことを要しないのである。なぜなら、神は欺くものではないということから、かかるものにおいて私は過たないということが一般に帰結するからである。しかしながら行動の必要はつねにかように厳密な検査の余裕を与えないゆえに、人間の生活は特殊的なものに関してしばしば誤謬に陥り易いことを告白しなければならず、そして我々の本性の弱さを承認しなければならないのである。
[#改丁]
幾何学的な仕方で配列された、
神の存在及び霊魂と肉体との区別を証明する諸根拠
定義
一 思惟[#「思惟」に傍点](cogitatio)という語によって私は、我々がそれを直接に意識しているというふうに我々のうちにあらゆるものを包括する。かくして意志、悟性、想像力、及び感覚のすべての働きは、思惟である。しかし私は、思惟から帰結されてくるものを除外せんがために、直接に[#「直接に」に傍点](immediate)という語を附け加えた。例えば、有意運動はたしかに思惟を原理として有するが、それ自身はしかし思惟ではない。
二 観念[#「観念」に傍点](idea)という語によって私は、その直接の知覚によって私がその同じ思惟自身を意識している、おのおのの思惟の形相(forma)を理解する。かくてすなわち私は、私が言うところのものを私が理解しているとき、まさにこのことからその言葉によって表わされたものの観念が私のうちにあることが確かであるのでなくては、言葉によって何ものも表現することができないのである。そしてかよううにして私は想像のうちに描かれた単なる像を観念と呼ぶのではない、否、私はここでかかるものを、それが身体的な想像のうちに、言い換えると脳の或る部分のうちに描かれている限りにおいては、決して観念とは呼ばず、ただそれが脳のその部分に向けられた精神そのものを形作る限りにおいて、観念と呼ぶのである。
三 観念の客観的実在性[#「観念の客観的実在性」に傍点](realitas objectiva ideae)ということによって私は観念によって表現されたものの実有性(entitas)を、それが観念のうちにある限りにおいて、理解する。そして同じ仕方で、客観的完全性、あるいは客観的技巧、等々、と言われることができる。というのは、観念の対象のうちにあるもののように我々が知覚するあらゆるものは、観念そのもののうちに客観的にあるのであるから。
四 同じものは、それが観念の対象のうちに我々がそれを知覚する通りに現われている場合、観念の対象のうちに形相的に[#「形相的に」に傍点](formaliter)あると言われる。また、その通りにではないが、かえってこれを補うことができるほど大きなものである場合、優越的に[#「優越的に」に傍点](eminenter)あると言われる。
五 我々が知覚する或るもの、言い換えると、その実在的な観念が我々のうちにある或る固有性、あるいは性質、あるいは属性が、それのうちに直接に内在する基体(subjectum)、あるいはそれらを存在せしめるあらゆるもの(res)は、実体[#「実体」に傍点](substantia)と呼ばれる。また厳密な意味における実体そのものについて我々は次のごとき観念しか有しない。すなわち、実体とは、我々が知覚するところの或るものが、つまり我々の観念のいずれかのうちに客観的にあるものが、そのうちでは形相的に、もしくは優越的に存在するところのものである。無は何ら実在的な属性を有し得ないことは、自然的な光によって知られているゆえに。
六 思惟がそれに直接に内在する実体は精神[#「精神」に傍点](mens)と呼ばれる。私はここで霊魂(amima)というよりもむしろ精神と言う。霊魂といふ語は両義的であって、しばしば物体的なものに適用されるからである。
七 場所的延長及び延長を前提する偶有性、例えば形体、位置、場所的運動、などの直接の基体である実体は、物体(corpus)と呼ばれる。しかし精神及び物体と呼ばれるものが、一つの同じ実体であるか、それとも二つの相異なる実体であるかは、後に攷究しなければならないであろう。
八 この上なく完全であると我々が理解し、そしてそのうちに何らかの欠損あるいは完全性の制限を含む何ものもまったく我々が把捉しない実体は、神[#「神」に傍点](Deus)と呼ばれる。
九 或るものが何らかのものの本性あるいは概念のうちに含まれると、我々が言うとき、そのものがこのものについて真であると、あるいはこのものについて肯定され得ると、言うの
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