賞として与うることとせり。
十七日、又一帰塲せり。依《よっ》て又一を先導として、餘作同道にてウエンベツ山《ざん》に登る。川を渉り、或は沿岸を往き、或は樹間或は湿地を通行するに、熊の脚痕《あしあと》臥跡《ふしあと》あり。漸く進んで半腹《はんぷく》に至るに、大樹の多きに驚けり。中には我等の三囲《みかかえ》四囲《よかかえ》等《とう》の老樹多きに驚けり。山頂に登り、近くは斗満※[#「陸」の「こざとへん」に代えて「冫」、184−1]別、遠くは阿寒山を眺め、近き渓々《たにたに》は緑葉樹の蓊鬱《おううつ》たるを望み、西に斗満の蓊鬱たるを望み、近き西には斗満川を眺めたり。帰路※[#「陸」の「こざとへん」に代えて「冫」、184−3]別に出でたるに、土人小屋あり、一人《いちにん》の住する無きも、傍らに熊送りの為め熊頭《ゆうとう》を木に刺して久しく晒したるを以て白色《はくしょく》となれる数個を見たり。珍らしく覚えて一個を携え帰れり。昨夜仔馬一頭|斃《たお》れたり。此れ熊害にかかりたるものなり。
十八日、餘作と共に寛は発足す。又一、八重藏は、放牧塲迄見送りくれたり。放牧の牛馬は、予を慕うが如きを覚えたり。
十
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