》するの勢い盛なるを見、且つ其迅速なるを見ては、実に言うべからざるの大快楽を覚えたり。且つ予は幼時|小金原《こがねがはら》にて野馬捕《のうまとり》とて野に放ちたる馬を集めて捕るを見たる事を想起せり。然れども彼時《かのとき》は只眼にて観るの楽《たのしみ》なるのみなりしも、現今我牧塲としてかかる広漠の地にて、且つ多数の我所有たる馬匹の揃うて進みて予に向うて馬匹等は観せたしとの意あるが如きを感じて、更に一種言うべからざるの感あり。其内に追々進みて近きに来り、瑞※[#「日+章」、第3水準1−85−37]北宝は無事に群中にありて大に安堵せり。然るに彼《か》の両種馬は、予が傍らに来りて心あるが如く最も親《したし》く接したり。他馬匹も同く、予は群馬の中《うち》に囲まれて、何《いず》れも予に接せん事を欲するが如く最も親しく慣るるは、此れ一種言うべからざるの感あり。
昨夜熊害は仔馬一頭を傷《いた》めたるのみなり。創《きず》は裂創《れっそう》にして、熊の爪にかけられたるも逃げ出して無事なりと。
熊は時々馬匹に害を与うるを以て、甞《かつ》てアイヌ一名を傭置《やといお》き、一頭を捕れば金五円|宛《ずつ》を臨時
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