関牧塲創業記事
関寛
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)故郷《こきょう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)亦|曾《かつ》て
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「陸」の「こざとへん」に代えて「冫」、174−10]別《りくんべつ》
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創業記事端書
[#ここから7字下げ]
世の中をわたりくらべて今ぞ知る
阿波の鳴門は浪風ぞ無き
[#ここで字下げ終わり]
予は第二の故郷《こきょう》として徳島に住する事殆んど四十年、為に数十回鳴門を渡りたるも、暴風激浪の為めに苦しめらるる事を記憶せざるなり。然るに今や八十一歳にして既往を回顧する時は、数十回の天災人害は、思い出《いだ》すに於ても粟起《ぞっき》するを覚うる事あり。然れども今日《こんにち》迄無事に生活し居《お》るは、実に冥々裡《めいめいり》に或る保護に頼《よ》るを感謝するのみ。
明治三十四年には、我等夫婦に結婚後五十年たるを以て、児輩《じはい》の勧めにより金婚式の祝を心ば
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