婆「いゝえ、昔の地獄《ぢごく》の火の車や無間地獄《むげんぢごく》などで、此方《こちら》に本当《ほんたう》の火の車が有《あ》りまして、半分《はんぶん》絵《ゑ》で描《か》いて有《あ》つて、その境界《さかひめ》がちつとも分《わか》りません、誠に感心だ、火の燃える処《ところ》が本当《ほんたう》のやうだ、怖《こは》いなんツて皆《みな》さんが仰《おつ》しやいます。岩「成程《なるほど》、然《さ》うでございますかね、それから正月《しやうぐわつ》と盆《ぼん》の十六|日《にち》に蓋《ふた》の開《あ》くと云《い》ふ、地獄《ぢごく》の大きな釜《かま》は何《ど》うしました。婆「あれで瓦斯《ぐわす》を焚《た》きます、夜《よる》は方々《はう/″\》へ瓦斯《ぐわす》が点《つ》きますから、少しも地獄《ぢごく》は怖《こは》い事はございません。岩「へえゝ、開《ひら》けたもんで。婆「開《ひら》けたツて、貴方《あなた》芝居《しばゐ》見《み》に入《い》らツしやいよ、一日お供《とも》を致《いた》しませう。岩「地獄《ぢごく》は芝居《しばゐ》が有《あり》ますか。婆「有《あ》るかツて、えらいのが来《き》て居《ゐ》ます、故人《こじん》高島
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