えから」
 清「大きいもんか」
 兼「私《わっち》より少し大きい、たしか今年廿九だから」
 清「何を云うのかさっぱり分らねえ、己《おら》ア道具の事を聞くのだ」
 兼「ムヽ道具ですか道具は悉皆《すっかり》家具《やぐ》蒲団まで私《わっち》にくれて行ったんです」
 清「まだ分らねえ……棚か箱か」
 兼「へい、店《たな》は貸店になっちまッたんです」
 清「何だと菓子棚だ、ウム菓子箪笥のことか、それが何うしたんだと」
 兼「何うしたんか訳が分らねえから聞きに来たんだが、親方へ談《はなし》なしだとねえ」
 清「そりゃア長二が為《す》る事だものを、一々|己《おれ》に相談する事アねえ」
 兼「だッて、それじゃア済まねえ、己《おら》ア其様《そん》な人とア思わなかった……情《なさけ》ねえ人だなア」
 清「手前《てめえ》何か其の仕事の事で長二と喧嘩でもしたのか」
 兼「いゝえ、長《なげ》え間|助《すけ》に行ってるが、喧嘩どころか大きい声をして呼んだ事もねえ……己《おれ》を可愛がって、近所の人が本当の兄弟《きょうでえ》でも彼《あ》アは出来ねえと感心しているくれえだのに、己が六間堀へ行ってる留守に黙って脱出《ぬ
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