く出入《でいり》をさせようとしたが、此方《こっち》で親しまないので余計な手間料を払ったり、不要な道具を注文したりして恩を被《き》せ、余所《よそ》ながら昔の罪を償おうとの了簡であるに相違ないが、前非《ぜんぴ》を後悔したなら有体《ありてい》に打明けて、親子の名告《なのり》をすればまだしも殊勝だのに、そうはしないで、現在実子と知りながら旧悪を隠して、人を懐《なず》けようとする心底は面白くないから、今度来たなら此方から名告りかけて白状させてやろうと待もうけて居《お》るとは知らず、幸兵衛は女房お柳と何《いず》れかへ遊山にまいった帰りがけと見えて、供も連れず、十一月九日の夕方長二の宅《うち》へ立寄りました。丁度兼松は深川六間堀に居《お》る伯母の病気見舞に行き、雇婆さんは自分の用達《ようたし》に出て居りませんから、長二は幸兵衛夫婦を表に立たせて置いて、其の辺に取散してあるものを片付け、急いで行灯《あんどう》を点《とも》して夫婦を通しました。
 幸「夕方だが、丁度前を通るから尋ねたのだ、もう構いなさんな」
 長「へい、誠にお久しぶりで、なに今|皆《みん》な他へまいって一人ですから、誠にどうも」
 と番
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