文恭院《ぶんきょういん》様と申す明君《めいくん》にて、此の時御年四十六歳にならせられ専ら天下の御政事の公明なるようにと御心《みこゝろ》を用いらるゝ折※[#「てへん+丙」、第4水準2−13−2]《おりから》でございますから、容易には御裁許遊ばされず、猶お御老中方に長二郎を初め其の他《た》関係《かゝりあい》の者の身分行状、並に此の事件の手続等を悉《くわ》しくお訊《たゞ》しになりましたから、御老中方から明細に言上《ごんじょう》いたされました処、成程|半右衞門《はんえもん》妻柳なる者は、長二郎の実母ゆえ親殺しの罪科に宛行《あておこな》うべきものなるが、柳は奸夫幸兵衞と謀《はか》り、玄石を頼んで半右衞門を殺した所より見れば、長二郎のためには幸兵衞同様親の仇に相違なし、然るに実母だからといって復讐の取扱が出来ぬというは如何《いか》にも不条理のように思われ、裁断に困《くるし》むとの御意にて、直《すぐ》に御儒者《ごじゅしゃ》林大學頭様をお召しになり、御直《ごじき》に右の次第をお申聞けの上、斯様なる犯罪はまだ我国には例もなき事ゆえ、裁断いたし兼るが、唐土《からくに》に類例もあらば聞きたし、且《かつ》別に
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