く実の母親と知ったから、飛出して名告ってくれと迫るを、幸兵衛が支えて、粗暴を働き、短刀を抜いて切ろうとするゆえ、これを奪い取ろうと悶着の際、両人に疵を負わせ、遂に落命させしと、一点の偽りなく事の顛末《てんまつ》を申し立てましたので、恒太郎源八を始め、孰《いず》れも大きに驚き、長二の身の上を案じ、大抵にしておけと云わぬばかりに、源八が窃《そっ》と長二の袖を引くを、奉行は疾《はや》くも認められまして、
 奉「こりゃ止むるな、控えておれ」

        二十九

 奉「長二郎、然《しか》らば其の方は全く両親を殺害《せつがい》致したのじゃな」
 長「へい……まア左様《そう》いう次第ではございますが、幸兵衛という人は本当の親か義理の親か未だ判然《はっきり》分りません」
 奉「左様《さよう》か……こりゃ萬助、其の方幸兵衛と柳が夫婦になったのは何時《いつ》か存じて居《お》るか」
 萬「へい、たしか五ヶ年前と承わりましたが、私《わたくし》は其の後《のち》に奉公住《ほうこうずみ》をいたしましたので」
 奉「夫婦の者は当年何歳に相成るか存じて居《お》るか」
 萬「へい幸兵衛は五十三歳で、柳は四十七歳で
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