忽《たちま》ち大病が全快すると申すか、口をかけても偽病《にせやまい》を起して参らぬのは何う云う理由《わけ》か、さアそれを聞こうと云うのだ、来なければ来ないでよい、早く申せば旨くもねえものをこんなに数々とりはせぬぞ、長居をして時間《とき》を費《ついや》し、食いたくもない物を取り、むだな飲食《のみくい》をしたゆえ代は払わんぞ」

        二十九

重「誠にどうも仕様がございません、向うは馴染で御挨拶だけで」
岡山「挨拶だけという事があるか……」
桑原「まア/\君、待ちたまえ、僕も度々《たび/\》来ては厄介になるけれども、能く考えて見ろ、此の旦那様を此処へ連れて来て、芸妓《げいしゃ》を呼ばっても来ず、その小峯が向うへ来て此処へ来ねえで見れば、己が呼ぶたんびに祝儀でも遣らぬようで、朋友に対しても外聞の至り赤面の至りじゃアねえか、来《き》ねえば来《き》ねえで宜《よ》いが、どうも此方《こゝ》へは病気で参《めえ》られませんと云うて向うに居るのは奇怪《きっかい》じゃアねえか、どう云う次第であるか、胸を聞こう、向うへ挨拶なら此方《こゝ》へも挨拶だけ来て貰わねえばなんねえ」
重「あれはお母《っか》
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